2026.01.02

伊勢志摩・的矢湾の恵みを次世代へ繋ぐ渡船屋「ひろ丸」 伊藤龍馬氏の挑戦

的矢湾の若き船頭

お客さんを船で運ぶ姿

三重県志摩市、穏やかな時間が流れる的矢湾。そこには、都市部での建設業というキャリアを経て、海という舞台で新たな人生を切り拓いた若き船頭・伊藤竜馬氏の姿があります。

渡船屋「ひろ丸」を営む彼は、単に釣りの場所を提供するだけでなく、この土地の豊かな海産物や、自然と共生する喜びを伝える伝道師でもあります。

なぜ彼はこの地で渡船業を営むのか。その情熱と未来への展望をインタビューで深掘りします。


建設業から転身した若き船頭の決意と屋号に込めた想い

このセクションでは、店主の経歴と屋号「ひろ丸」の由来について回答します。

ー 渡船業を始めたきっかけを教えてください。

伊藤: もともとは大阪で長らく建設業に従事していました。26歳の時、縁あって三重県へ帰郷し、実家の牡蠣養殖を手伝っていた際、地元で渡船業を営む方から「うちで働かないか」と声をかけていただいたのが全ての始まりです。

異業種から飛び込んだこの世界ですが、海と共に生きる生活に、今では深いやりがいを感じています。

的矢湾を背景にした伊藤龍馬氏

ー 屋号の「ひろ丸」にはどんな由来があるのでしょうか?

伊藤: よく「名前から取ったの?」と聞かれるのですが、僕の名前は「竜馬(りゅうま)」なので少し違うんです(笑)。

実は、父の名前である「ひろし」から一字をもらって名付けました。父が築いてきたこの海への想いを、屋号と共に大切に引き継いでいきたいと考えています。

ひろ丸の船

的矢湾の豊かな生態系と釣りに適した穏やかな環境

このセクションでは、的矢湾の地形的特徴と魚の多さの理由について回答します。

ー 的矢湾はどのような特徴を持つ場所ですか?

伊藤: 的矢湾は典型的なリアス式海岸で、水深は6mから10m程度と比較的浅いのが特徴です。的矢川の水系から、山の栄養をたっぷり含んだ淡水が流れ込むため、プランクトンが非常に豊富なんです。

この栄養が、アオサ海苔や小魚を育み、それを求めてチヌや青物といった魚たちが集まる、いわば「天然の養殖場」のような豊かな生態系が形成されています。

的矢湾 アオサの養殖場
アオサ養殖場

ー 釣り人にとってのメリットを教えてください。

伊藤: 一番の魅力は「穏やかさ」です。湾の入り口が狭いため外海からのうねりが遮られ、四方を陸に囲まれているので風の影響も最小限に抑えられます。

筏(いかだ)が揺れにくいので船酔いの心配も少なく、初心者の方や小さなお子様連れのご家族でも、安心して釣りに没頭できる環境が整っています。 

夕暮れ時の的矢湾

チヌ釣りの醍醐味と「ひろ丸」が追求する職人技

このセクションでは、黒鯛釣りの面白さと特製の団子について回答します。

ー 筏釣りの一番の魅力はどこにありますか?

伊藤: 日常の喧騒から切り離され、12時間以上という長い時間を海の上で自分と向き合えることです。

ただ魚を待つのではなく、じっくりと考え事をしたり、静寂の中で自分のリズムを整えたりできる。その「有意義な時間の使い道」こそが、筏釣りの最大の贅沢だと感じています。 

穏やかな的矢湾の様子

ー チヌ(黒鯛)釣りの面白さとは?

伊藤:チヌは「釣れた」ではなくて、 「釣った」と言える魚です。状況を見極め、カキガラ粉末や押し麦、オキアミなどを絶妙に配合した「特製ダンゴ」を駆使し、自ら食い気を誘い出して「釣った」という実感が得られる、非常に奥深いゲーム性を持った魚です。

その職人技とも言えるプロセスこそが、多くの釣り人を魅了して止まない理由ですね。

釣り客

家族で楽しめるBBQと「笑顔」のサービス

このセクションでは、筏の上での快適な設備と体験メニューについて回答します。

ー 初心者や家族向けの工夫はありますか?

伊藤: 快適に過ごしていただくための設備には特にこだわっています。筏の上には四角い専用トイレを設置しており、長時間の滞在でも女性やお子様が安心して利用できるよう配慮しました。

また、筏自体も5.5m四方とゆとりあるサイズで設計し、大人数でも揺れや沈みを気にせず快適に過ごせる安全な設計にしています。 

筏
筏(イカダ)

ー 釣り以外の楽しみ方を教えてください。

伊藤: 筏の上でのバーベキューも自由にお楽しみいただけます。冬場には練炭の貸し出しも行っており、持ち込んだ食材や、その場で収穫した新鮮な牡蠣を焼いて楽しむ時間は格別です。

釣りという目的を超えて、この場所でかけがえのない思い出を作ってほしいと願っています。 

ー 接客の面でのこだわりはありますか?

伊藤: 釣りの船頭といえば少し無愛想なイメージがあるかもしれませんが、僕は「お客さんの前では常に笑顔でいること」を一番大切にしています。

また、1日に一度は必ず見回りを行い、困りごとがないか確認するのはもちろん、冬の冷え込み対策として練炭を用意したり、釣った魚を捌くサービスを提供したりと、「もう一度来たい」と思っていただけるような気配りを徹底しています。

こうした細やかなサービスこそが、「ひろ丸」が選ばれる理由だと信じています。

お客さんを筏に乗せるところ
筏(イカダ)に横付けした船

伝統的な「餌釣り」を50年先まで伝える未来

このセクションでは、将来のビジョンと地域活性化の目標について回答します。

ー これからどのような取り組みをしたいですか?

伊藤: 昨今はルアー釣りが主流ですが、釣りの基本中の基本は「餌釣り」にあると僕は考えています。この餌釣りの奥深さや、海と対峙する面白さを若い世代にも伝えていきたい。

現在32歳の僕が、これから50年、60年とこの海を守り、次の世代へとバトンを繋いでいくつもりです。今後は的矢湾のより多くのポイントへ筏を配置し、さらに多様な景色の中で釣りを楽しめる環境を作っていきたいですね。

ー 最後に、地元への想いを聞かせてください。

伊藤: 志摩市は人口減少という課題を抱えていますが、的矢湾が持つ海の魅力や、そこで育まれる海産物の質は、今も昔も変わりません。

僕がここで船頭として一生懸命に生きる姿を見せることで、訪れる県外の方々や、一度は地元を離れていった若者たちに、改めて志摩市の豊かさを実感してもらいたい。

「ひろ丸」が、この地域の未来を照らす一つの灯りとなれるよう、これからも走り続けます。

伊藤龍馬氏インタビューの様子

施設案内とアクセス

  • 施設名: 渡船屋「ひろ丸」 
  • 所在地: 三重県志摩市磯部町 的矢湾 
  • 主な体験: 筏釣り、BBQ、牡蠣土産 
  • 周辺観光: 伊勢神宮(内宮・外宮)、二見浦、志摩スペイン村 

用語解説:筏釣り(いかだづり)とは 海上に浮かべた5.5m四方の木製の足場から釣る方法です。 船酔いしにくく安定しています

紹介ページ:インスタグラム


著者紹介:小﨑 拳太郎

筆者:小﨑 拳太郎

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